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アメリカ研修報告


2月の5日から14日の10日間、アメリカのカリフォルニアを中心に農業研修に行ってきました。これを通じて感じたこと思ったことなどまとめました。

きっかけ

もともとアメリカの農業に興味があったわけではありません。地域農業の生き字引みたいな方が近所にいらっしゃるのですが、その方にさそわれて、「そんなに忙しくない時期だし楽しそうだしまあ行ってみるか」くらいの軽い気持ちで参加しました。

研修の概要

今回の研修は、”アメリカの農業”といえばパッと思いつくような、どでかい機械を使ってガーッと穀物を収穫するような農家ではなく、アメリカとしては小規模な農家を実際に訪れ、現場を見せてもらいながら農場主(農場経営者)の話を聞きましょうというスタイルでした。農場間を移動するとなると300kmのバス移動。距離感おかしくなります。バスでの総移動距離は1,957km以上。

では本題。

アメリカの農業を支えるメキシカン

元切り花農家との懇談会@カリフォルニア州 サリーナス

肝心の最初にも関わらず元農家(笑)。農場は無いので懇談会は宿泊先のモーテルの一室で。一時は息子さんも継いでやっていたようですが、南米から輸入される安い切り花には太刀打ちできず、10年ほど前に農業をやめてしまいました。とはいっても悲壮感はなく、「今はゴルフが趣味ですのよ。オホホ」なんてことを言い回しは別としておしゃってて人生楽しそう。やめるといっても農地を良い値段で売却したようで、”売却ゴール”と表現してもおかしくないんじゃないか。

農業の現場から離れていることもあってか、アメリカの農業について俯瞰的な話を聞くことができました。その中で1つあげると、家族経営(アメリカの農業は99%が家族経営)であっても経営者と現場作業者が別れていて、カリフォルニアの現場ではメキシコ人が大きな戦力になっているということ。中にはillegalな人たちもいて、今の大統領になってから労働力の確保問題が浮上しているようです。日本の担い手不足とは理由が違う。

”移民(外国人)が農業”と聞くと残念ながら日本ではマイナスなイメージが漂いますが、アメリカではそうでもないようで(直接メキシカンと話せてませんが)、実力に応じた報酬や、機会的な評価による報酬だけでなく功労者にはファミリーとして手厚い対応をするといったような文化知ることができました。


▲モーテルは基本車移動だと利便性高く、何度か利用しました。ここは懇談会とは別のホテル

 


▲日本のロードサイドにある例のホテルとはまるで違うことを念のため補足

生存戦略としてのオーガニック

「The farm」 - 有機栽培農家@カリフォルニア州 サリーナス

http://thefarm-salinasvalley.com/

卸向けにレタスやブロッコリー、セロリ等を栽培し、農場の隣の直売所向けにイチゴ等の果物含む多品種を栽培している農家。こちらの農家はアメリカでいえば小規模(とはいえ100ha以上。福島で桃を家族経営だと3haくらいが限界)で、大農家と価格勝負するにはスケールメリットで及ばず、差別化のためにオーガニックを選択しているとのこと。農場主曰く、オーガニックの市場は急激な伸びは無いものの、徐々に拡大しているとのこと。小さいところは差別化すべしというのはアメリカでも同じようです。


▲イチゴは露地栽培で8ヶ月以上収穫できるとのこと。雨少ないので病害虫少ない

アメリカでもオーガニック(有機農業)は慣行栽培に比べてコストがかかるので、販売価格も高めになります。なので、ある程度金銭的に余裕がある層が顧客になります。オーガニックを専門に扱うチェーンのスーパーもあり、中でもWhole Foods Marketが有名でしょうか。そのうち日本にも進出しそう。


▲買い物バッグがお土産の定番。メルカリに出品されてます。

ライセンス生産で外国産との価格競争に立ち向かう

「Green Valley Floral」 - 切り花農家@カリフォルニア州 サリーナス

https://greenvalleyfloral.us/

オーナーのJanetさんは日系二世。農場がある一帯は以前は切り花の産地だったそうですが、コロンビアから安い切り花が流入し農家数は激減。と、状況は最初にお話を聞いた元切り花の方と同じだが、こちらの農家では「David Austin」という生産販売にライセンスが必要なバラを生産し、それを農場の売りにしていました。結婚式などでよく使われるようです。小さい農家が戦う方法にはいろいろあって、ライセンスというのは発想がなかった。どうやって希少なライセンスをゲットできたのかは聞くの忘れた。
あと、面白いなと思ったのは、なんとハウスが木製で40年以上前のもの。もちろんところどころ補修されてはいるものの、なぜここまで長持ちするかというと、雨が少なく台風などの天災がめったに無いから。日本でビニールハウス立てることが苦行に思えてきました。

じゃあ施設のメンテナンス費がかからなくていいねとそういうわけでもなく、カリフォルニアの平地は雨が少なく貴重。そのために水を再利用しており、室温を下げるために壁をつたった水だけでなく、花にあげた水もポッドの下でキャッチし再利用。気候の違いはここまで影響を与えるのか。カリフォルニアはカラッと暖かくていいなーだけではない苦労があるのね。


▲花をめでる感覚は同じね

雨が降らなきゃ引っ張る

サン・ルイス貯水池@カリフォルニア州

農業には水が必須。いくら栽培技術が発達したとしてもこれは普遍的なこと。しかしながらカリフォルニア州の平地は雨が少ない。そこで壮大なスケールの灌水事業を実行したのがジョン・F・ケネディ大統領。簡単に言えば長ーい用水路と大きいダムを作ったのですが、日本で例えるなら距離感だけでいうと、青森で降った雨が川を流れて東京湾に注ぐ前にポンプで高尾山に上げて、そこから用水路を通して山口あたりまで流して使うイメージ。スケールが大きすぎてよくわからない。

スペシャリストによる徹底した分業

ジョン・フランスさん - 有機栽培落葉果樹農家@カリフォルニア州 ポータービル

日本では珍しい落葉果樹を有機栽培している農家さん。ジョン・フランスさんが父から経営を引き継いだあと、徐々に有機栽培に切り替えてきたそうです。ジョン・フランスさんは現場の仕事はせず、経営の仕事に徹しています。アメリカは日本に比べて各従業員の役割が明確に決まっているとはメディア等を通じて聞いていたのですが、農業でもそれは当てはまるよう。その徹底した分業を支えているのが「ファームマネージメントカンパニー」という企業の存在。現場作業者の手配だけでなく作業者の教育、栽培技術や情報の提供、マネージメントまでサービスとして提供しています。つまりなんでもできる。不在地主(農地の持ち主がその土地にいないこと。多くは持ち主は”東部の金持ち”)は農地管理をファームマネージメントカンパニーに全て委託しています。

じゃあ農場主がやるべき仕事は何かというと、ファームマネージメントカンパニーが提供する技術や情報を、自分しかしらない農地の状態と組み合わせ、ベストな選択肢をリスクをとって判断すること。

さらにファームマネージメントカンパニーは農地と農場主の仲介も実施します。果樹の場合は栽培されている樹木もセットで価格がつき売買/賃貸されます。農業をやりたくなったら仲介業者を通じて始めらるし、家族でやってきたとしても経営が厳しくなったら売りに出して辞められる。アメリカでも家族経営という言葉は使いますが、日本のように土地と家族の一致が前提となっていることを、前提としているわけではありません。


▲素敵なお庭でお話を聞きました


▲等間隔で植えられたオレンジ。日本だと土地が細切れなことが多く、ここまで整然とならない。

事業承継のコツはデータ取り

「T-Y Nursery」- 植木農家@カリフォルニア州 トラビューコ・キャニオン

https://www.tynursery.com/

少品種を大量に作りコストを下げ、販売価格を下げることを強みとしてきた植木農家、安武さん。価格の安さでは切り花のように外国産には勝てないのではと思いますが、土がついているものは輸入することができないのでそもそも外国産の植木が入ってくることはない。

植木栽培を始めた安武さんは90歳近く、経営のメインは息子さんに移っています。日本の農家(に限らず家族経営の企業)同様に、自分の息子に事業を承継していました。安武さんは経営を引継ぐなら外で飯を食ってから、息子といえど現場作業からという方針だったようです。息子さんが一緒に事業を継いだ友人の方も同席していたので事業承継のコツを聞いてみると、それはデータを取ることでした。データの中には使えないものもあるけどまずはとる。時間が経てば得られるデータもあるが重要なのは聞かないと分からないデータ。初代である安武さんは頭のなかで顧客のニーズを把握し、生産から販売まで進めていたそうですが、それは聞き出さないとわからない情報で、事業を継続するには必要なものであるとのこと。


▲山が見えるとなんとなく落ち着くことに気づく

圧倒的なブランドでの販売

「The Vegetable Shop (Chino Farm)」- 有機栽培農家@カリフォルニア州 ランチョ サンタフェ

http://www.chinofamilyfarm.com/

他の有機栽培農家と異なり、卸や小売業者などには出荷せずコンシューマ向けのみ。宅配等もやっていないようで(アメリカは日本に比べ宅配のサービス品質が悪いことも理由かも)、畑に隣接した小屋の直売所で販売するのみです。高級別荘地が近く、立地が良いこともあるかもしれませんが、車を運転して遠方から来るお客さんも多く。webサイトやSNSなどを一通りはやっているようですが、大きく新聞/TV広告を出したり、ロードサイドに大きな看板を出したりはしていません。現在の農場主は2代目で、先代が農業を始めてから着実に積み重ねてきた結果が強力なブランドとなり、顧客を引き付けています。

現在は3代目も就農しているのですが、3代目はハーバード大学の法学部を卒業したのだとか。遡って2代目のご夫婦はお医者さんらしい。子供が農業を継ぐかどうかは家族経営の農家にとって大きなテーマ。経営の哲学や理念は重要ですが、稼げるということも、子供が農業を継ぎたいと思う大きな理由の1つなのではないでしょうか。


▲だいぶ年季の入ったトラクター


▲販路は畑に隣接した直売所のみ。価格の表示はない

与えられた環境条件でベストを尽くす

「Bedner’s Farm Fresh Market」@フロリダ州 ボイントンビーチ

http://www.bedners.com/

こちらの農場はもぎ取り園をメインとした農場。これまでと異なり東海岸。西海岸のカリフォルニアに比べると雨が多いようで湿度が高い。カラッとした暑さではない蒸し暑さが懐かしい感じ。この辺りの土地は砂地で、日本でも川沿いの土地なんかは砂地であることが多いけどその比ではなく、砂浜かってくらい砂。砂地の特徴は排水性が良いことなのですが、そのために肥料成分をためておくことができず、肥料を多めに与えましょうというのがセオリーです。

じゃあフロリダのこのあたりは農業に不利とは簡単には言えず、保肥力が低い土地という一方で雨が多い。なのでカリフォルニアとは異なり無料で水を使うことができます。与えられた環境に合わせて作物を選び、販売方法を変え、ニーズに合った経営をしていくという考えが、こちらの農場から伝わってきました。


▲30cmくらい土を掘ると水が出てくるそうです


▲直売所が併設されている。ちょっとしたスーパーくらいの品揃え。仕入れた商品のほうが多い。

さいごに

研修参加にあたっては、アメリカの農業は日本と条件が違いすぎて、参考になるのかなーと思ったりもしたのですが、結果的には行ってよかったと思います。この研修は歴史が長いようで、インターネットで情報が得られ、海外に行くことが貴重ではなくなった現在においては昔行った人が受けた程のインパクトはなかったかもしれません。ですが、実際に行って目で見て経験しないと得られないものは確かにある。今自分が取り組んでいる技術や経営の延長線にあるものだけでなく、ぶっとんだ方向にある知見が、なかなか解決しない課題の解決に必要なのではと思っております。


▲朝飯の定番。芋がうまいの。


アメリカ研修報告” への2件のフィードバック

  1. いい研修でしたね! 私の叔父もサリナスで、菊作りして既にリタイアしてますが、私も何度もサリナスの農場にいきました。
    規模も違いますが、取り組みかた等参考になります。

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