”中規模流通”というキーワードで農業ビジネスのアイディアを、「こんなやり方があるよ」といった具合で提案しているのがこの本です。本書では中規模流通を、
農協や青果市場を通して全国に農産物を安定的に供給する「大規模流通」ではなく、農産物直売所やインターネットで販売する「小規模流通」のいずれでもない売り方です。
と定義しています。
亀岡果樹園では農協に出荷している割合が大きいのですが、福島が桃の産地であるからこそメリットを享受できています。市場で高値をつけてもらうには物量が重要なファクターの1つで、震災後は状況異なるのですが、福島産の桃は山梨に次ぐ市況で推移していました。
大規模流通のみでも農業経営は成り立つのですが、2016年に私が就農してから、直売所やインターネットでの販売にも取り組んでいます。お客さんの声を良いものでも悪いものでも直接聞けることはやりがいを感じられて勉強になりますし、生産面だけでなく販売面でもあれやこれやとやることが単純に楽しいです。
直売所やインターネットでの販売は始めたばかりでまだまだやることはあるのですが、問題も感じています。小規模流通だと届けることができる消費者が限られてしまう点です。直売所であれば幹線道路沿いにあることが多く、車で来れる近隣エリアの人に限られます。インターネット等を利用した遠方への販売は、少量だと送料が割高になりますし、たくさん買ったとしても家族の構成数が少なくなっている昨今では生モノだと食べ切れことが難しい場合があるでしょうし、食べきれないからといっておすそ分けできるような親戚やご近所付き合いが無い人も多いのではないのでしょうか。
そんな中で、”中規模流通”の考え方は有効な手の一つかなと思いました。小規模の利点である顔の見える農産物をまとめて流通に載せコストを抑え、小さい単位での購入を可能にしたりすぐ食べられる状態で提供したりする。消費者が手に取りやすい保存のきく加工品を前提に、生産コストを抑えて加工用に生産する。近隣の生産者で小さくまとまり作業を分担して販売する。などなど、生産者にとっても消費者にとっても間に入る小売店や飲食店にとってもメリットのあるやり方がありそうな気がします。